十一月二日、国立文楽劇場での文楽十一月公演初日に向かったのでその時の報告をまとめないとならないのですがそれが遅れてしまい、司令部からどれだけのおしかりを受けることやら。さて、演目についての説明とジャッジメントタイムです。
この伊賀越道中双六は安永六年、大坂中の芝居初演のものを増補、浄瑠璃向けにしたもので近松半二、近松加作によって作られ、天明三年に初演されました。道中双六のようなストーリー展開で今でいうロールプレイングゲームのような感じです。敵討の当事者だけでなくそれにかかわる人人の葛藤にもスポットが当てられておりそれが本作の最大の特徴です、寛永十一年に伊賀上野鍵屋の辻で起こった事件をもとにしており、みんなの大好きな曽我兄弟や赤穂浪士の討ち入りに並ぶ三大仇討ちの一つです。この作品のプロトタイプは講釈、こちらも忠臣蔵と同じく今でも幅広いメディアで展開されているよ。
さぁ、ジャッジメントタイム!
通し狂言をジャッジするのは大変なのですが、やりましょう。まずは「鶴ヶ丘の段」から「円覚寺の段」までを審判しましょう、最初の掛け合いはステルスになっています。出語りになるのは和田行家屋敷の段から、アレから十年経過した咲寿大夫くんの成長具合がこの段落でわかってきた感じがします。次の円覚寺の段の方はと言うと、初役かどうかは知らないが文字久大夫ちゃんの語りは今回、パンチが少し効いている感じです、しかも、いつもは源大夫師匠とタッグを組んでいる藤蔵師匠と一緒、それならわかります。前半部も「唐木政右衛門屋敷の段」からすごい展開に、問題のシーンは幼い娘を嫁に取る政右衛門の部分です。こちらは最初、希大夫くんのかわいらしい語り口が効くのですが最後には咲大夫師匠と燕三師匠のタッグの効果がじわじわと出はじめた、なんせ、この段落はかわいいものづくしだから、さて、うちのイチオシはやっぱり「沼津の段」これって住大夫師匠が好きな段落の一つのはずでは、今回この段落は津駒大夫ちゃんのものです、時代物の中に少し世話物の成分が混じっていることで知られるこの段落、寛治師匠と連れ弾きには寛太郎くんも一緒、最初の「東路に」から「泊まりを急ぐ二人連れ」までの部分かわいい♡
次は「平作内の段」こちらは気になるのは呂勢大夫くんの方である、今回は少しナチュラリーな語り口だったかな?最後は「千本松原の段」これ、ついに来たか、今回はこちらの段落は住大夫師匠のものに。前半部最終パートだからこの段落は十兵衛に追いついた平作が最後になぜか自害してしまうというとんでもない展開に、ここがすごいのです。
親子一世の逢い初めの逢ひ納め・・・・
ここの部分から最後までが真価を発揮しているポイント、こうした涙を誘う段落って住大夫師匠は好きなのですね。
さあ、人形遣いの方はと言うとマークしなければならないのが豊松清十郎師匠の方だわ、志津馬のブラックヒーロー的な感情表現、何というかっこよさ、でも、初役なのか過去に何度か経験ありなのかまだ知らなかった。続いてはうちの顔見知りの和生師匠。今回は十兵衛とお谷ちゃんの二役、勘当をうけ、女中扱いもされ、心砕けたお谷ちゃんの悲しみ、十兵衛くんの親を思う素直さ、どちらも表現力は保証済みです。勘寿ちゃんもこれまたいいですよ、大内記と政右衛門の対決シーン、ここがグッドジョブ!平作は初役だという勘十郎師匠はというと、最初心配だったのですが、演じる役柄が役柄です、沼津の段で十兵衛の後ろで重量挙げのように荷物を担ぐ場面が印象的でした、あと、千本松原の段での突然の自害から最後まで。
さて、今回のまとめはこれで終わるか。